安倍政権(アベノミクス)のジレンマ

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安倍政権の三本の矢の第一の「黒田異次元金融緩和」の真相については前回、前々回の「小冊子」で述べた。
FRB(連邦準備理事会)は今までの5年半にわたる400兆円近い金融緩和で総資産中の国債保有率が異常に膨らみ財務体質が悪化してきたので、米経済や失業率の現状からは緩和縮小は妥当ではないが縮小が止む無きに至っている。
アメリカから見た黒田日銀緩和の位置付けはFRBの緩和縮小補てんで縮小と日本の債権市場開放であることも述べた。

アベノミクスが短命に終わることを説明したが、それは「黒田異次元金融緩和」と「消費税」に関係している。
外人は邦銀の国債売りに乗じて日本の国債保有比率を10%プラスにまで増やしているので最早日本の国債市場の日本独断は許されなくなった。

安倍首相は8日、来年4月に予定されている消費税が景気に与える影響を検証するよう関係閣僚に指示したが、これは消費税回避を匂わすものである。
97年消費税を3%から5%に引き上げた途端に山一証券、北海道拓殖銀行破綻の事態に陥り98年からの長期デフレに繋がった。
当時と異なり今日の日本企業は75‐80円台の円高にも堪えたほどの体力をつけているし銀行の財務体質も良好、さらにカネ余りで外的ショックに対する耐久力を付けていることから消費税是認論が多い。
しかし今日の好企業業績は円安メリットによる部分が大きく、私の予想では今後円高になる。もし消費税で消費が低迷すればたちどころに景気低迷だろう。
こうしたことから安倍首相は消費税の先送りを考えているのだろう。

ここで今後起こり得る二つの点を指摘する:
①黒田金融緩和政策は長期金利を押し上げる:10年物国債利回り年内最高1.5%
②消費税先送りなら外人の日本国債叩き売り:10年物国債利回り2%プラス

消費税を上げなければ2%金利で国債利払い(国債残1,000兆円)は20兆円で歳入の約50%、上げれば国債利払い15兆円に歳入激減で財政健全化どころでは無い。
消費税を上げても上げなくてもアベノミクスは短命に終わるのである。

安倍首相が消費税先延ばしを匂わせた途端に外人が先物で売りを浴びせニッケイが大きく下がったことはアベノミクスのジレンマを表すものである。

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