天才役者トランプと天才台本書の勝利

2月28日(日本時間3月1日)世界注目のトランプ議会演説。
何時もの乱暴な唯我独尊的態度は一変、大国の大統領に相応しい演説であった。
野次を飛ばそうと待ち構えていた民主党の議員たちは野次どころか共和党議員と一緒に立ち上がって拍手しそうになっていた。
壇上からイスラム・テロの致命傷から立ち直った黒人被害者を名指して讃えるなど国民の涙を誘うシーンの演出は見事であった。
1日前までの「暴れん坊トランプ」と打って変わった「紳士トランプ」を誰も想像しなかった。トランプが大統領になった1月20日から2月28日の39日間に作られたトランプのイメージは初の挑戦となった合衆国両院議会という晴れの舞台で一変して見せた。粗野で、野蛮で、自分勝手で何をするかわからない「トランプ・リスク」は品格高く、思いやりに溢れ、かつ力強いアメリカの愛国者と言う「リスクオフ」に変わった、、演出家に素直に従ってきたトランプの姿であった。

目的の為にトランプをどう使うかを誰よりも心得ている二者が存在する。
一人はトランプ生みの親でもあるCFR(外交問題評議会)であり、その当面の目的はアメリカの事実上の支配階級(エリート・エスタブリッシュメント、具体的にはメディアとウォール街を含む軍産複合体)の構造改革、すなわち主流派から反主流派への権限移行である。
もう一人は戦略補佐官、上級顧問のスティーブ・バノンに代表される破壊主義者とイスラエル右派思想を代弁する35歳のスピーチライター(演説執筆)のスティーブン・ミラーである。バノンが「ミラーはトランプの声を見つけるのが上手だ」と言うように、ミラーはトランプが話しているうちに粗野に、横暴になってしまう言葉、そして議会演説のように、自ら大国に相応しい大統領になってしまう言葉を創造するのが得意である。
トランプに目の敵(かたき)にされ「嘘つき」とまで言われたCNNやニューヨークタイムズもさすがに「見事」とは言わなかったが、「演説らしい演説をした」と言わざるを得なかった。

市場は減税、インフラ投資、規制緩和等経済に関する確信的発言が無かったので一瞬失望感が漂ったが、演説のトーンから何をするか分からないトランプ・リスクが消え、夢と希望の先送りが効を奏してNYダウ平均は前日比303ドル高、2万ドルの大台を超す21,115ドルで引けた。
いよいよ来週から議会でトランプの「夢と希望」と「現実」の差が問われることになる。市場に吹き荒れたトランプフィーバー(炎)が3月15日のFRBの冷水(利上げ・ドル高)で鎮火され、日本(緩和・円安)にお鉢が回って来るかも知れない。
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