トランプの対外敵視政策の裏表

トランプの言動は一見暴言、朝令暮改と言われるが、実は裏には狡猾な計算がある。
本誌で述べてきたように、消費大国アメリカにとって保護貿易は輸入コスト上昇で国内物価上昇、結果企業収益増大、賃金上昇でGDP成長に寄与する。
アメリカはレーガン政権以来脱工業主義を経済指針としている為国内生産で国内消費をカバー出来ない経済構造になっていて恒常的貿易収支赤字体質である。
貿易戦争という関税による富の奪い合いにおいては、相手国に対して貿易赤字が多い国ほど奪う富が多くなるから、米中貿易戦争においては、アメリカの対中輸入額は約55兆円で、対中輸出は約15兆円だからアメリカは40兆円に対する課税分だけ余計に中国の富を奪うことになる。トランプが「対中貿易戦争はアメリカ必勝」というのは太陽が東から出るように正しい。
トランプは同盟国であろうと仮想敵国であろうと、アメリカに貿易赤字をもたらす国を敵と見なして挑戦することで国民の声援を得ようとしている。
初戦は中国に宣戦布告、次に欧州、日本と戦線を拡大し、国民の声援を高めながら11月の中間選挙に繋げる。

「貿易戦争に勝者なし」が世界のコンセンサスなのに、トランプが対中500億ドル中340億ドル(7月6日)、中国報復関税を受けて2,000億ドル追加関税(7月10日)の直後NYダウが下がったと思いきや上昇に転じて高値追いになっている。
私は「ここ一番!」の読者や「目からウロコのインターネット・セミナー」の視聴者に「対中関税が実際に実施されればいったん株価は下がるがあっと言う間に回復して高値を追う」と言ってきたが、今のところその通りになっている。
対中貿易戦争は中国からの輸入からアメリカが利益をむしり取ることがアメリカの利益追求であるが、実は背後にトランプと習近平は知っているが誰も気が付いていない米中首脳阿吽の「助け合い」がある。
その前に何かに付け米中は対立しているように見えるが、オバマ時代より両国は見えざるところでG2(米中両国でアジア覇権を共有する)を模索している。
習近平は10月の党大会で過剰生産と不良債権で中国経済の癌となっている中国経済の50%を占める国営企業の構造改革を強調したが、党や地方政府の圧力で上げた拳が下せなくて困っている。
トランプにとって将来の戦略的パートナーの経済構造改革は望むところである。トランプは対中関税政策で中国の対米需要を激減し不良国営企業を壊滅に追いやろうとしている。
習近平はアメリカの保護主義は世界に対する侵略的挑戦であると対トランプ批判の声を大にしているが本音ではトランプに感謝している。
さすがに米中2大国首脳は、金正恩に負けず政治力学をよく心得ている。
私はこの際親愛なる安倍首相について言うことは何もない。

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