日中平和友好条約は1978年8月12日調印、10月発効。
日本は「中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法的政府である」ことを承認(Recognize)しているが、「台湾は中国の不可分の領土の一部である」ことについては認識(Acknowledge)するが承認(Recognize)はしていない。
日本は本条約にポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持するという但し書きを明記している。
ポツダム宣言第8項とは、1943年11月のカイロ宣言で、第二次大戦で日本が奪った台湾と澎湖諸島返還を義務付けた条項であり、日本敗戦後の返還先は中華民国(後の台湾政府)であって中華人民共和国ではない。
1979年1月1日調印された米中平和友好条約でアメリカは日本と同じく「中国は一つ」の原則は承認(Recognize)するが、「台湾は中国の一部」については政策として認識する(Acknowledge)立場に立っている。
中国が主張する原則である「台湾は中国の一部」を「承認」すると、中国の台湾統一、併合の為の行為が平和裏であれ、武力行使であれ「内政問題」となり、第三国(アメリカ)の干渉は許されなくなる。
「認識」の場合は、理解している(Understand)とか尊重する(Respect)であって絶対的な承認ではなく、曖昧かつ政治色が濃くなっている。
「台湾が中国の一部であること」を承認しなければ、中国の台湾併合又は統一行為に関してアメリカは干渉出来る立場になる。
「中国は一つ、台湾は中国の一部」は中国が主張する「原則」であって「現実」ではない。
台湾固有の領土は1979年1月1日の米中平和友好条約時から今日に至るまで中国に支配されたことも領有されたこともない。
台湾は中華民国政府として台湾の国土を領有し、国土に住む国民によって選ばれた国会議員からなる立法機関としての国会と、国会が定めた法を執行する行政機関と国家国民を監視する司法機関の三権分立制度のもとに国家を運営している紛れもない独立した民主国家である。
国連安全保障常任理事国であった中華民国(台湾)は1979年1月1日に調印された米中平和友好条約でアメリカと中国との国交が回復し、台湾(中華民国)と断交になると同時に国連から除名されたが、国連加盟国であることは必ずしも独立国の条件ではない。
「台湾は中国の一部」を承認(Recognize)している国は世界200か国中わずか51か国である。
台湾への軍事援助をする度に中国から抗議を受けるアメリカは「中国は一つ、台湾は中国の一部であることをよく認識している」と繰り返している。
ロシアが独立国ウクライナに軍事侵攻したことが侵略であるように、中国が独立国台湾に軍事侵攻する可能性があるのだからアメリカが台湾の民主主義を守る為に軍事支援をするのはアメリカの自由意志である。
習近平が台湾侵攻を決断するレッドラインは「台湾の独立宣言」とされている。
2024年1月に就任した台湾総統頼清徳は「台湾は独立した民主国家であるから今更何も独立宣言などする必要はない」と言っている。
台湾の国民の台湾人としてのアイデンティティ(ID)は増え続け70%に向かっているが、台湾・中国両方のIDは減少、中国人としてのIDはゼロに向かっている。
習近平は中国人としてのIDが無くなりつつある台湾を併合または統一することを政治使命としているのである。
もし習近平が中国が主張する現実とかけ離れた原則(中国は一つ、台湾は中国の一部)を根拠として台湾併合、統一の為に対台湾武力侵攻をしたなら、それはウクライナに侵攻したプーチン同様侵略行為になる。
台湾海峡、金門島海域では人民解放軍と台湾軍の一触即発状態が日増しにエスカレートしている。
台湾にとってはアメリカの軍事支援だけが対中抑止力である。
次期大統領が確実になりつつあるトランプは最近のTVインタビューで台湾に「(抑止力の)代償を払え」と言うつもりだと明言している。
他人の弱みに付け込む悪質ビジネスマンそのものである。
「日米安保は日本の安全の要」である日本にもトランプが請求書を束ねてやってくるリスクが高まっている。
民主党の大統領指名は、党分裂を避け、ハリス一本に絞られることになった。
ハリス一本化に貢献したヒラリー・クリントンが副大統領指名を受ければ、トランプに勝てる可能性が濃厚。日本の思いやり予算倍増などのトランプリスクが避けられるかも知れない。
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