安倍晋三の「新たなアプローチ」

2006年6月4‐5日プラハ(チェコ)で安全保障に関する国際会議が開かれ、私はハドソン研究所の一員として参加した。同年6月6‐8日ドイツで開催される予定のG7に向かう途中ブッシュ米大統領が参加することになった。当時は第一次安倍内閣(2006年9月‐2007年9月)で安倍晋三首相もG7に出席した。
第一次安倍内閣発足と同時に安倍晋三首相は「自由と繁栄の弧」なる外国政策を打ち出した。日本の政治政策、特に外交政策は戦後一貫して米国追従を旨としてきただけに日本独自の外交路線は私の目をひいた。当時のマスコミは、今でもそうだが対米追従だったので戦後初めてとなった安倍自主外交に抵抗し無視した。そこで私は日頃ご指導を戴いていた竹村健一先生にお願いしフジテレビの「報道2001」や読売系で特集を組んでもらったが、全く盛り上がらなかった。丁度その頃当時の外務次官であり本政策発案者である谷内正太郎氏からパレスホテルでランチのお誘いを受けたことからプラハの会議で私が谷内次官、麻生外務大臣のお墨付きで「自由と繁栄の弧」をアピールすることになった。
ハドソン研究所の社長ハーバート・ロンドン氏(昨年11月永眠)は「少し時期が早いのでは」とあまり乗り気ではなかったが応援してくれた。「アメリカと肩を並べることさえ許されないのに、先を行こうなどとんでもないことだ」でさんざんな結果であった。そして3か月後2007年9月第一次安倍内閣は終わった。
現在谷内正太郎氏は第三次安倍内閣の国家安全保障局長であると同時に安倍内閣外交の中心的存在である。(www.chokugen.comをご覧下さい)2月4日中国の春節に当たって東京タワーが中国色(真っ赤)にライトアップされ、安倍首相は中国語で「中国の皆様、明けましておめでとう!」(大家、過年好!)とビデオメッセージを送り、「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」、「日中関係を新たな段階へと押し上げていく」と述べた。「新たな段階」また「新たなアプローチ」は安倍首相の対露指針でもある。中国との新たな段階、ロシアと新たなアプローチはアメリカ(トランプ)の対露、対中敵視政策に反する。特にロシア(プーチン)への新しいアプローチは戦後アメリカの対日プロパガンダ「北方領土が返る日、平和な日」(北方4島が返らなければ平和条約を結ばない)を覆すものである。日本ではアメリカに逆らった内閣は必ず短命に終わるが、安倍内閣は憲政史上最長期になろうとしている。それは安倍首相が「トランプ(アメリカ)の表向きの対露、対中敵視」ではなくトランプ(アメリカ)の本音に追従しているからである。日本の安倍降ろし勢力はアメリカのトランプ降ろし勢力である。
トランプは負けないし、安倍も負けない。世界の覇者に躍り出てきた中国とこれを許さじとするトランプ(アメリカ)の建前と本音を明らかにするのが次回の「小冊子」Vol.106である。
明日の本音を知らねば今日を失う。

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